村上春樹:国教の南、太陽の西
【2002年7月13日読了 文庫 講談社・講談社文庫】
今まで読んできた村上作品と、一読して匂いというか、手触りというか、非常に感覚的な部分だけれども、その「何か」が「違うな」と思ったのが一番大きかったです。
タイトルを私なりに意訳すると、「ここではないどこか(へ行くことを焦がれている。もしくは行けなくても、ここよりましな何かが存在することを心に想像する事)」となります。
そして、それはまさにそのままこの小説の内容に通じると言えるように私には思われました。
そういう話です。
主人公である「僕-はじめ」が、「そのここではないどこか」との関わりをどうしていくのか。
またはどうなっていくのか‥は、実際読んでみて、それぞれの解釈によって違うような気がすごくします。
ところで。
村上は一人称小説が多いのだけれども、この作品では「まっとうに一人称」していて私は内心で驚嘆しました。いわく、「僕-はじめ」が知ること以上の事は明らかにならない。のです。逆に言うと、もちろん「僕-はじめ」が知らないことは(つまり彼に語られない第三者の「話」は)わからないまま、物語は終わっていくのです。読者にも「謎」のまま。
ということは、その「謎」を「解く」事がこの作品のテーマではないということではないか。とも私には思えます。
おそらく、「謎」を提示された「僕-はじめ」のその心の動きや対応などの方に作品のテーマが存在しているように思われるのですが。(「謎」はこの場合単なる「自己-僕-を映す鏡」でしかない?)
その様に考えてみると、この作品はちゃんと行き着く先まで行き着いて終わっているなと私には思えるのです。
【2002年7月記】
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