中山可穂:ダグラダ・ファミリア【聖家族】
【2002年2月1日読了 文庫 新潮社・新潮文庫】
数年前に(確か)この作家の「猫背の王子」という作品を読んだ。
メル友のHが勧めてくれたのだ。
その作品を読んだ時に、自分的には熱狂して読んだというわけではなかったかと思う(おそらく、ヒロインのミチルのキャラが好みじゃなかったかと思うのだが(苦笑))。
それでも「もうこの人の作品は読む気はしない」とまでは思わなかった。
非常に私的な感想だけど、その点が昔読んだ「ナチュラルウーマン」とは違う所だと思う。
そういうわけでこの文庫を購入して、札幌へ講習に向かう道すがら読み始めたわけ。
正直面食らってしまいました。私、この本を読んでる最中ずっと泣きっぱなし!(笑)
汽車に乗っている間に読み切ってしまったのですが、それでもずっとぽろぽろ涙が止まらなかったですね。隣が空席で助かりました。
内容的には、ピアニストでゲイの「ガリ」こと石狩響子が、最愛の人成島透子の忘れ形見である息子の桐人を引き取り、桐人の遺伝子上の父親に当たる男の元恋人高橋照光(照ちゃん)と三人で家庭を作るまでの話。
‥こう書くと身も蓋もない?(苦笑)つか、これだと「三人で家庭を作ってからどういう事がおこったか?」と思っちゃうかもしれないけど、本編では「三人で暮らすことにした」で終わっている。
本編は、ガリがどれだけ透子の事を愛しているか、その感情が綴られている。そして透子自身も大変魅力的に描かれている。そうして、でも簡単に「一緒に暮らしましたとさ。めでたしめでたし」とならない問題もちゃんと描かれている。
オイラ自身、透子の想いに「そうだよな‥」と納得するところがものすごくあった。
それでいてガリの欲求もすごく判った。
個人的には、ガリのスポンサーであった梅ばぁ(梅林という人)と、ガリとの絡みの部分がすごく好きだったりする。梅ばぁは全盛期は「赤坂のジャンボ」と呼ばれるような実業家で、女性ながら常に男装をしている人だった。
この人がガリのピアノの才能を見抜いて、援助し続けてきたのだ。
最初は体の関係もあったみたいだけど、今はそういう所は越えてしまっている。精神的にものすごく「許し合っている」「信用することさえも意識していないほど信用している」というのが感じられる関係だ。それだけじゃなく、梅ばぁをかばってガリはその左指に傷を負い、第一線から退いてしまう事になったという過去もあったりする。そういう二人のシーン‥。
特に、透子が亡くなって、ガリが入院している梅ばぁの所へ行って、ただただ泣いてしまうシーンと、ガリがピアニストとして第一線にカムバックするコンサートへ、病院から正装して(でも点滴の袋はぶら下がっている)梅ばぁが駆けつけてくるシーン。
もう私は号泣でした。
多分非常に個人的な事だけれども、その当時の私の精神状態とシンクロする部分がものすごくあったのではなかったか‥と今になってみるとそう思えます。正直せつなくてしょうがなかったですね。
でも、この作品の‥というかこの作家の好きなところは、同性の関係でありながらも、その向こう(将来というべきか?)にはポジティブな空気を感じるところなのではなかろうか。
どんなにつらくてもなんでも、自分は明日も生きていく。生きて、何か(幸せ?)を感じて生きていくのだ。
そういう雰囲気を感じられる所が本当にすきだと思う。
多分、自分の中での受け止め方で、ナチュラルウーマンとの違いが、これなのではなかろうか。
そういう風に感じながら泣けたので、個人的には読了後落ち着くことが出来て、とてもありがたかったです。そうして、中山可穂の作品をしばらく読み続ける事になってしまいました‥(笑)。
【2002年2月記】
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